zico's blog

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『アナ雪』における雪のアニメーション

最初の記事は、ディズニーのアニメーション映画『アナと雪の女王』(原題: Frozen)における雪のアニメーションが綺麗という話です。

まずはアニメーションの紹介動画を

雪のアニメーション技術を紹介した動画が公開限定公開されています。

追記: 一般公開だと思っていたら実は限定公開でした。
追記2: 限定公開ですがURLが公式サイトに貼られているので視聴可能です。 http://www.disneyanimation.com/technology/publications/55

本物と見分けがつかないかも。

この技術は、ACMにおけるCGやインタラクティブ技術に関する分科会であるSIGGRAPHの国際会議(SIGGRAPH2013)で発表されたようです。
http://s2013.siggraph.org/attendees/technical-papers/events/material-point-method-snow-simulation

固体力学と流体力学のハイブリッド技術!?

その論文のPDFはこちら。
https://disney-animation.s3.amazonaws.com/uploads/production/publication_asset/94/asset/SSCTS13_2.pdf

// 他にも色々な論文が出ているみたいです。
// http://www.disneyanimation.com/technology/publications

私は連続体力学のことは全くわかりませんし、Abstractしか読んでおりませんが、調べてみると連続体力学における運動の記述にはラグランジュ的記述とオイラー的記述があるという知見を得ました。

扱いにくい雪の性質を克服

雪のアニメーションでは、積雪のシミュレーションやその描画についてよく研究されてきた一方で、雪の「運動」についてはまだ十分になされていないとのこと。さらに、固体(solid)や流体(fluid)のための既存の技術では納得のいく結果は出なかった模様。

そもそも世の中の物体は固体と流体の性質を併せ持っていますが、ベタベタした雪や重い雪は特にその性質が顕著で扱いにくいそうです。そこで、固体力学と流体力学をまとめた連続体力学によるハイブリット技術を編み出し、雪の塊の衝突と粉砕をシミュレーションして美しい雪のアニメーションを実現したということです。

連続体力学における連続体の記述法

連続体力学には、主に弾性体を対象とした固体力学や、流体を対象とした流体力学があり、対象を場の理論を用いて巨視的にとらえた比較的新しい学問のようです。場の量子論もこれに含まれるとか。つまり連続体(continuum)は弾性体や流体などの対象のことです。

連続体を記述するには、古典力学的にその構成要素の時間発展を追跡するラグランジュ的記述と、連続体を場の量として捉えるオイラー的記述があります。後者は量子論的でモダンな感じ?場の量子論では場の量によって粒子の存在を記述するそうで、つまり粒子の運動によって生じる場の変化から逆算して粒子を捉えるものと理解しています。

  • ラグランジュ的記述
    連続体中の一質点の運動を追跡します。固体力学で用いられるようです。これを利用して連続体を解析するのがラグランジュ法(Lagrangian Material Point Method)です。
  • オイラー的記述
    連続体中の固定された一空間点(観測点)を通過する質点の運動を記述するそうです。流体力学で用いられるようです。これを利用して連続体を解析するのがオイラー法(Eulerian Material Point Method)です。

ラグランジュ法とオイラー法はまとめて粒子法(Material Point Method)と呼ばれています。アナ雪ではこの2つの方法による連続体力学的な独自の方法"A Material Point Method For Snow Simulation"が用いられたというわけです。

Let it go. Let it snow.

美しいアニメーションもこうした研究に支えられているのですね。技術を知るとさらに美しく見えてきます。
実は私、まだ映画を観に行っていません。観たい!!雪を見たい!!雪に注目して観るのもいいかもしれませんね。
それにしても暑い。少しも寒くないわ。

参考